次回日程

  • 12月22日(日)
  • 11月13日(水)~ 12月05日(木)
  • 筆記
  • 全国主要4都市

国際交流・留学にすぐには役立ちそうにない教養講座①

ー世界に「日本が存在していてよかった」と思ってもらえる日本に…

 

 

No.1 はじめに

 

 今回のコロナ禍は未曾有の体験ですね。ここ何十年か様々な世界的事件が起こりました。私がこの「留学・国際交流業界」に関わり始めたのが丁度30年程前ですが、その30年前、1991年の湾岸戦争、そして2001年の9.11同時多発テロ、2011年の東日本大震災が特に影響大きかったように思います。

 しかしこのコロナ禍ほどの大きく長期に渡る災禍はありませんでした。現時点でもまだ収束が見えていません。

 ところで、今年2021年は近代中国が始まった辛亥革命から数えて110年目の年です。その辛亥革命を率いた孫文は1895年の初来日以降、通算10年近く日本に滞在し、当時、政治家だけではなく、一般人も含めて多くの日本人が彼を支援しましたが、現在一方で日本と中国は残念ながら、国家間での領土問題、歴史認識問題等、いくつかの問題を抱えているのも事実です。

 また同時期、近代中国文学の大家、魯迅は日本に190221歳の時に国費留学生として来日し、1909年までの7年間を日本で過ごしました。(彼は、実は初めの2年間はこのJYDA・HSK神楽坂オフィスから歩いて10分程のところにあった「弘文学院」という日本語学校に通っていました。)

 

(JYDA・HSK神楽坂オフィスと弘文学院の場所)                

 

弘文学院跡地
東京市牛込区西五軒町三十四番地(現、新宿区西五軒町12,13番地)

 

 しかし、残念ながらその7年の間に日本人の親友はできなかったようです。

 ただ一人だけ、学生の魯迅を、敬意と愛情をもって親切・丁寧に指導した仙台医学専門学校の「藤野厳九郎先生」だけは尊敬していました。一般人である、たった一人の藤野先生の優しさで、日本は救われています。「国際交流」は「個人の体験」です。だから留学・国際交流プログラムに係わる、参加する、誰もが、一人の「藤野先生」になることは出来るはずです。

 勿論、私は、中国だけではなく世界の様々な国に対して、そんなつもりで、仕事をすることが国際交流であると思っています。

 コロナ禍も含めて、私たちの将来はますます大変な時代になっていくように思われます。であるからこそ、私たちの未来である青少年達が、さらに不安なこのグローバリズムの波に呑み込まれないように、それらを乗り越えて、世界に「日本が存在しててよかった」と思ってもらえる「日本」を作ってゆくべく、日本と世界に貢献できる「おとな」となるために、今、私たちが、出来ることを是非このコラムを読んで頂いているみなさん、プログラム参加者として、またプログラム運営側とて、一緒にやっていきたいと願っています。

 第2次世界戦時、フランスのストラスブール大学がナチス・ドイツの侵略を受けフランス中央のクレルモンに疎開・避難を余儀なくされている状況下、詩人ルイ・アラゴンは「ストラスブール大学の歌」という詩で「教えるとは希望を語ること、学ぶとは誠実であること(Enseigner c’est dire esperance Etudier fidelite)」と語ります。

 私もいつの間にか60歳も半ばを過ぎようとして色々と学んできたような気もしますが、しかし、何かを教えるというより、皆さんと希望を語りたいと思っています。またこのコラムを書くためにコツコツと学んでいきたいと思っています。

 さて、前置きが長くなりました。次回はこの「すぐには役立ちそうもない」コラムのサブタイトルである『世界に「日本が存在していてよかった」と思ってもらえる日本に…』について語りたいと思います。これは作家・司馬遼太郎が1990年のあるインタビューで語った言葉です。それではまた!

以上

2021年7月

 

No.2 先ず「日本」について を見るlist-type-white